生成AIを使った対話型のアプリ、業務の自動化、社内文書を検索させる仕組みを、それぞれ別のサービスで用意しようとすると、対話用、自動化用、検索用というように選ぶ対象が分かれる。ツールをまたぐたびに、連携方法や認証情報の管理も個別に発生する。
Difyは、チャットボット、Text Generator、Agent、Chatflow、Workflowという5種類のアプリケーションタイプと、ファイルやウェブサイトから作れるナレッジベース(RAG)を、一つのキャンバス上で組み合わせて構築できるAIアプリ開発プラットフォームである。対話、業務自動化、社内文書を使った回答生成を、同じ環境の中で設計できる。
Difyとは何か:統一されたキャンバスで動くAIアプリ開発基盤
Difyは、統一されたキャンバス上でエージェンティックワークフローとRAGパイプラインを構築できる、本番運用向けのAIアプリ開発プラットフォームである。対話型のアプリケーションと、複数の処理を自動でつなぐワークフロー、社内文書を検索対象にするナレッジベースを、同じ画面の中で組み立てられる。
この基盤を使うと、対話用の応答を作る作業、業務を自動化する作業、文書検索の仕組みを作る作業を、別々の製品を渡り歩かずに進められる。それぞれのアプリケーションタイプがどう違うかは、会話の有無と実行の性質によって分かれる。
アプリケーションタイプの違い:会話の有無と実行の継続性で分かれる
Difyのアプリケーションタイプは、チャットボット、Text Generator、Agent、Chatflow、Workflowの5種類である。これらは、会話のやり取りがあるかどうかと、処理が一度きりで終わるか継続的に動くかという2つの軸で性質が分かれる。チャットボットは会話を通じて応答を返す基本形であり、Text Generatorは会話を介さずに入力に対する出力を生成するアプリケーションタイプである。
WorkflowとChatflowの実行方式の違い
Workflowは、開始から終了まで一度だけ実行される。自動でレポートを生成する処理や、データを整形して次の工程へ渡すパイプラインのような、バッチ用途に向く。
Chatflowは、チャットの記憶(メモリ)機能を持ち、利用者が送る一つひとつのメッセージがフローを起動する。会話を続けながら応答を返す対話型のシナリオに向く。一度限りの処理を自動化したい場合はWorkflow、会話を継続しながら応答を返したい場合はChatflowという基準で選べる。
エージェント機能で実現できること
Agentは、タスクを推論し、承認済みのツールを使い、コンテキストを保持しながら、設定した制約の範囲内で動作する。使用できるツールを承認済みのものに限定し、設定した制約の範囲内で動作させられるため、複数の判断や外部ツールの呼び出しを含むタスクを任せる場合の選択肢になる。
RAG(ナレッジベース)の仕組みと検索方式の違い
Difyのナレッジパイプライン機能では、ファイル、ウェブサイト、オンラインドキュメント、ドライブから取り込みパイプラインを作り、検索可能なナレッジベース(RAG基盤)を構築できる。取り込みパイプラインは再利用可能な形で作成でき、同じ設定を使って情報源を後から更新できる。
Vector・Full-text・Hybrid Searchの違い
ナレッジベースの検索方式には、Vector Search、Full-text Search、Hybrid Searchがある。Hybrid Searchでは、意味の近さを表すセマンティック優先度と、語句の一致を表すキーワード優先度の重み付け(Weight Settings)を、Rerankモデルを使わずに設定できる。この重み付けによって、意味の近さと語句の一致のどちらを優先するかを調整できる。
Rerankモデルが検索精度に与える役割
Vector SearchとHybrid Searchでは、Rerankモデルは既定で無効になっている。有効にすると、サードパーティのRerankモデルが、取得したテキストチャンクを並べ替えて精度を高める。既定では無効のため、検索結果の並び順を改善したい場合は明示的に有効化する必要がある。
Difyを使うことで得られる利点と活用が広がる場面
アプリケーションタイプとナレッジベースを一つの環境で組み合わせられるため、これまで別々の製品で用意していた機能を、同じ基盤の中で設計できる。
統一キャンバスでアプリタイプを組み合わせられる利点
チャットボット、Workflow、Chatflow、Agent、そしてナレッジベースは、同じキャンバス上で組み合わせて構築できる。同じ環境の中で、対話型のアプリケーションタイプとナレッジベースを組み合わせて構築できるため、社内文書を検索対象にした回答生成のような仕組みも、別のサービスを経由せずに設計できる。
バッチ処理と対話型アシスタントを同じ基盤で構築できる
Workflowによる自動レポート生成やデータ処理パイプラインのようなバッチ用途と、Chatflowによる会話を継続する対話型アシスタントは、同じ基盤の中で構築できる。
Cloud版とセルフホストの違い:利用上限、運用形態、データ処理の取り決め
Cloud版とセルフホストでは、利用できる上限や、データ管理の責任の置き所が異なる。どちらを選ぶかによって、確認する内容が変わる。
Cloudプラン(Sandbox/Professional/Team)の利用上限
以下は、公式の料金ページで確認した内容である(出典:Dify Cloud pricing、確認日:2026年8月7日)。
Sandboxは無料で、200メッセージクレジット、1ワークスペース、1メンバー、5アプリまで利用できる。Professionalは月額59ドルまたは年額590ドル(年間契約で17%割引)で、3メンバー、50アプリ、月5,000メッセージクレジット、ナレッジドキュメント500件、ストレージ5GBまで利用できる。Teamは月額159ドルまたは年額1,590ドル(年間契約で17%割引)で、50メンバー、200アプリ、月10,000メッセージクレジット、ナレッジドキュメント1,000件、ストレージ20GBまで利用できる。
Sandboxの上限は1メンバー・5アプリという規模であり、複数人での試作や本数の多い試作には収まりにくい。
セルフホスト(Community/Enterprise)での運用責任の違い
オープンソースのCommunity Editionは無料でセルフホストでき、Dockerによるワンコマンドデプロイと、完全なAgentランタイム、Workflowエディターを備える。
Enterprise版のセルフホストはオンプレミスまたはVPC内で稼働し、SSO/SAML、RBAC、監査ログに対応し、SOC 2 Type IIとISO 27001の認証を取得している。SSO/SAML、RBAC、監査ログは、Enterprise版セルフホストに備わる機能であり、Community Editionには含まれない。
Data Protection Agreementで定められたデータ処理者としての義務
Data Protection Agreementでは、運営会社(Company/Data Importer)が、顧客(Customer/Data Exporter)のデータ処理者と位置づけられている。運営会社は、契約書またはExhibit Aに定めた目的以外でPersonal Dataを処理してはならない。
契約終了時、運営会社はCustomerのPersonal Dataを返却または削除する義務を負う。ただし、適用法で追加保存が求められる場合は例外になる。この契約は、GDPR、UK GDPR、CCPA、そして国際移転のための標準契約条項(SCC)を対象とする。Cloud版を利用する場合、個人データの扱いはこの契約に基づく義務の範囲で定まる。