動画生成AIで試作を始めようとすると、テキストから動画ができる仕組みと、画像を使う仕組みのどちらを選ぶか、最初の入口で迷います。
企画から編集までを社内で一続きに進めようとする場合、商用利用に踏み込んでよい範囲を先に確認しておく必要があります。担当者がこの確認を後回しにすると、公開の直前になって著作権や表示ルールの確認漏れに気づく事態になりかねません。
動画生成AIは、テキストや画像を起点にした複数の生成方式を持つ制作手段です。文化庁や総務省・経済産業省が公開している著作権とリスク管理の確認点を一次情報で押さえることが、導入判断の軸になります。
動画生成AIとは何か:仕組みと生成方式
動画生成AIと一口に言っても、テキストだけを入力にする方式と、画像を入力に使う複数の方式があり、Google CloudのVeoはこれらをドキュメント上に整理しています。
テキストから動画を生成する方式(Text to video)
Google CloudのVeoは、文章による指示だけを入力にして動画を生成するText to videoという方式をドキュメント上に持っています。画像や動画素材を用意しなくても、企画の言葉を入力に使う方式です。
画像を起点にした生成方式(開始・終了フレーム、参照画像)
Veoはこれとは別に、開始フレームとなる画像を指定して動画を生成する方式、開始フレームと終了フレームの両方を画像で指定する方式、参照画像(Ingredients)を使って特定の人物や物を動画内に登場させる方式も提供しています。開始フレームだけを指定する方式では、動画の出だしの構図を固定し、続きの展開をAIが作ります。開始・終了フレームの両方を指定する方式では、始まりと終わりの絵を先に決め、途中の動きをAIが補います。
参照画像を使うIngredients方式は、事前に用意した画像に写る人物や商品を、そのまま動画の中の要素として使う方式です。この方式を使う場合、参照画像に写っている人物や商品の権利をどう扱うかという確認が、生成方式の仕様とは別に必要になります。
動画生成AIが企業活用で注目される理由
国内企業では、企画から動画生成、既存動画の拡張・編集までを一連の工程として扱う動きが広がっており、Adobe Fireflyのように商用利用を想定した設計を持つモデルも登場しています。
企画・生成・編集を一連の工程として扱う活用の広がり
国内企業の動画生成AI活用事例では、企画・構成設計からAIによる動画生成、既存動画の拡張・編集までを一連の制作工程として扱う動きが広がっています。こうした進め方は、SNS広告やプロモーション動画の量産で使われています。
商用利用を想定した設計とAI生成の来歴管理(Content Credentials)
Adobe Fireflyの動画生成モデルは、商用利用に対応した設計になっています。生成した動画にはContent Credentialsが自動的に付与され、AI生成であることを示す来歴情報を動画に残せます。
動画生成AIが向いている用途と、権利確認が必要な用途
動画生成AIは、SNS広告やプロモーション動画の量産で活用されている一方、参照画像を使う生成方式では、著作権の確認が別途必要になります。
SNS広告やプロモーション動画の量産に向く理由
国内企業の活用事例が示すとおり、動画生成AIはSNS広告やプロモーション動画のように、短尺で本数を多く必要とする用途で使われています。企画から動画生成、編集までを一連の工程として社内で扱う進め方が、この量産の中心になっています。
生成方式の特性から見える判断が必要な用途
Veoが提供する開始・終了フレーム指定や参照画像(Ingredients)を使った生成方式は、特定の人物や商品を動画内に登場させられる一方で、その人物や商品にまつわる権利の確認が生成方式の仕様とは別に必要になります。参照画像に第三者の著作物や人物が写っている場合、生成した動画をそのまま商用利用してよいかどうかは、技術的な仕様だけでは判断できません。参照画像を使う場合は、著作権上の論点を生成方式の選択と合わせて確認する必要があります。
商用利用前に確認する著作権の論点
文化庁は学習段階と生成・利用段階を分けて著作権法上の論点を整理し、総務省・経済産業省はリスク管理の考え方を示しています。
学習段階と生成・利用段階で異なる著作権法上の論点
文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」で、AI開発・学習段階と生成・利用段階を分けて著作権法上の論点を整理しています。学習段階では、著作権法第30条の4等の権利制限規定が関係します。生成・利用段階では、学習段階の整理とは別に、生成された動画が個別に著作権を侵害していないかどうかを評価する必要があるとしています。動画生成AIで作った動画を商用利用する場合、学習段階の整理だけでなく、生成・利用段階での評価も確認する必要があります。
商用利用前に確認する著作権チェックリスト&ガイダンス
文化庁は「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公開しており、開発者、権利者、利用者のそれぞれの立場から、商用利用前に確認すべき望ましい取組を示しています。動画生成AIを業務で使う企業について、利用者の立場についても確認すべき取組が示されています。
AI事業者ガイドラインが示すリスク管理の視点
総務省・経済産業省は2026年3月31日に「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を公表しました。このガイドラインは、AIエージェントが外部環境へ自律的にアクションを取る場面でのHuman-in-the-Loopの徹底など、事業者が業務導入前に確認すべきリスク管理の考え方を示しています。動画生成AIを企画から生成、編集まで一連の工程として業務に組み込む場合、この考え方は、AIによる生成結果を人が確認する工程をどこに置くかを検討する材料になります。
ここまでの内容で確定しているのは、Veoが持つ複数の生成方式の仕様、Adobe Fireflyの商用利用対応とContent Credentialsによる来歴管理、文化庁と総務省・経済産業省が公開している著作権・リスク管理に関する公的な整理です。一方、参照画像に写る人物や商品の権利処理、そして個別の生成物が著作権侵害に当たるかどうかの評価は、この記事の情報だけでは判断できません。実際に生成した動画を商用利用する際は、対象ごとに確認する必要があります。