Moonshot AIは2026年7月16日、新しい大規模言語モデル「Kimi K3」を正式発表した。総パラメータ数は2.8兆に達する。
同日から、対話サービスのKimi.com、業務用アプリのKimi Work、開発者向けのKimi Code、そしてAPIで利用できるようになった。全モデルウェイト(学習済みの重み一式)は、2026年7月27日までに公開する計画だという。
正式発表に先立ち、TechCrunchは匿名情報をもとに次期モデルを2〜3兆パラメータ級と報じていた。今回の公式発表で、状況ははっきりした。総パラメータ数は2.8兆という具体的な数字に確定した。提供開始の事実とウェイト公開の予定日も明らかになった。
Moonshot AIとKimiの系譜
Moonshot AIは2023年初頭に設立された、中国・北京拠点のAI企業だ。対話サービス「Kimi」と、その基盤モデルを開発している。Kimi K3は、2025年7月に公開した前モデル「Kimi K2」の後継にあたる。K2は内部に多数の専門家ネットワークを持ち、入力に応じてそのうちの一部だけを動かす設計を採用していた。モデル全体の総パラメータ数は1兆個にのぼる一方、実際に1回の処理で使われるのは320億個だけだったという。K2の設計は、MoE(Mixture of Experts、専門家混合)と呼ばれる。
Kimi K3の総パラメータ数は、K2の1兆から2.8兆へ拡大した。あわせて画像をそのまま読み取れるようになり、最大100万トークンのコンテキストにも対応した。
2.8兆パラメータの規模と、実際に動く専門家ネットワーク
Kimi K3は、モデル全体で2.8兆個のパラメータを持ち、896ある専門家ネットワークのうち1回の処理で16を実効的に有効化する。Moonshot AIは、896から16を選ぶ構成を「Stable LatentMoE」と呼ぶ。あわせてKimi Delta Attention(KDA)とAttention Residuals(AttnRes)という新しい注意機構も導入した。Moonshot AIは、Stable LatentMoEとKDA、Attention Residualsによる構造と学習方法の改善によって、K2と比べ全体的なスケーリング効率がおよそ2.5倍になったとしている。
今使えるのはサービスとAPI、ウェイト公開はこれから
発表と同時に使えるようになったのは4つの経路だ。一般向けのKimi.comまたはKimiアプリ、デスクトップアプリのKimi Work(バージョン3.1.0以降)、開発者向けのKimi Code(ターミナルで/modelコマンドから選択)、そしてAPIである。APIのモデル名はkimi-k3で、公式価格は100万トークンあたり、キャッシュに一致した入力が0.30ドル、通常入力が3.00ドル、出力が15.00ドルだ(2026年7月19日時点)。
一方、全モデルウェイトの公開は2026年7月27日までの予定にとどまる。開発者向けドキュメントのKimi Code更新履歴は、Kimi K3をすでに「released and open-sourced(公開・オープンソース化済み)」と記しているが、より詳しい公式技術ブログは公開を今後の予定として扱っている。7月19日時点で、配布先のページやライセンス、技術報告書は示されていない。サービスとAPIはすぐ使えるが、ウェイトをダウンロードして自前で動かすことは、まだできない。
多くのモデルを上回り、GPUカーネル最適化で際立つ

画像出典:Moonshot AI「Kimi K3: Open Frontier Intelligence」
Moonshot AIは、KimiCode、Claude Code、Codexなど複数の実行環境を使った自社の評価スイートでKimi K3を比較した。テストした多くのモデルを上回ったという。一方で、全体的な利用感ではClaude Fable 5やGPT 5.6 Solに対してなお差が残るとも自ら記しているが、GPUカーネル最適化という限定的なタスクに絞れば、Claude Opus 4.8を大幅に上回ったとも報告した。
利用時に注意したい挙動
Moonshot AIは、Kimi K3の制約も明らかにしている。別のモデルからセッション途中で切り替えた場合や、実行環境が過去の思考履歴を正しく引き継がない場合には、出力の品質が不安定になり得るという。依頼内容があいまいな場合は、利用者に代わって想定外の判断をすることもあるといい、そのため用途によっては、システム指示やAGENTS.md(エージェントの行動範囲を書き記すファイル)で動作範囲を明示するよう勧めている。
自社運用は64基以上のアクセラレーター構成が目安
Moonshot AIは、ウェイト公開後に自社環境でKimi K3を動かす場合の目安として、64基以上のアクセラレーターによるスーパーノード構成を挙げている。